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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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役員退職金についてのご相談 

【役員退職金についてのご相談】
by 岩松琢也

 新年、あけましておめでとうございます。 
丸の内アドバイザーズの岩松です。本年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年頂いたご相談の中で特に多いテーマの一つに「役員退職金」に関する問題が挙げられます。ご存じのとおり、退職金は所得税の計算上、通常の給与所得など他の所得と比べて有利な取り扱いとなっており、事業承継や相続対策、M&A、生命保険と組み合わせた節税などで、役員退職金は非常に多く利用されております。
 しかし、退職金の制度を悪用して、度の過ぎた節税が行われる恐れもありますし、特に同族会社で社長に支払われる役員退職金は、実質的に社長が自分で決められますから、税務調査等において役員退職金は代表的な重点項目となっています。
 役員退職金は、支払う会社においては「損金」となるので法人税が減少する一方で、受け取る個人の方は、所得税の計算が優遇されておりますので、メリットが非常に大きいのですが、逆にこれが否認されますと、「役員退職金(損金となります)」が「役員賞与(損金となりません)」となってしまい、法人税の追加納税が発生するのに加えて、さらに「退職所得」が「給与所得」となるために、個人の所得税や住民税も追加納税となります。たいていそういう場合は、支給金額も大きいですから、それぞれの加算金なども含めると深刻なダメージを被ってしまいます。

 役員退職金が否認される理由としては、以下の二つが代表的です。
A.実質的に退職していると認められないのに退職金を支給している。
B.退職金が多すぎる。


 Aのケースは、本来会社を退職することによって退職金が払われるべきところ、退職したはずの経営者が引き続き会社の経営に関与しているなど、退職の実態が伴わないために、支払われた退職金が、退職金ではなく賞与や臨時給与等として扱われてしまう、というケースです。
 たとえば会社の事業承継において、子供に後継者がいない経営者は、従業員や第三者に会社を売って、買い手から対価として株式の譲渡代金と役員退職金を受け取るということが多くあります。このとき、買い手からは、急に売り手の経営者がいなくなってしまうとあとが心配なので、譲渡後もしばらく会社に残ってもらいたいと希望します。このような場合、最初に退職金を受け取っておいて、その後も経営に関与していると、上記のような退職の実態が伴っているのかという問題が生じます。
 また、儲かっている会社などで、節税対策として生命保険に加入して保険料を支払っておいて(損金の分だけ会社の利益が減って法人税が少なくなります)、将来保険金を受け取るときには同時に役員退職金を支払う(保険の益金と退職金の損金をぶつけて相殺する)ことによって、税金を抑えつつ創業者利潤を得るという方策がよく見受けられます。たいていは、保険が満期になる時期に引退できるよう後継者を育成するなどの計画が伴うのですが、思うように計画が進まず、まだ引退できる状態でないのに保険が満期となってしまったり、中には計画自体がたてられていないなど、行き当たりばったりのケースもまま見受けられます。ただ保険金を受け取れば、まとまった金額の利益が計上されて法人税がかかりますので、できる限り退職の形を整えて退職金を受け取ってしまうという人もありますが、かなりのリスクが伴います。

 次にBのケースですが、役員退職金は比較的低い税負担で創業者利潤を得る貴重な機会ですし、社長であれば、ある程度自分の考えで金額を決めることができますので、金額は上ぶれしがちです。また、すでに述べたような、M&Aがらみであったり、生命保険とセットであったりすると、そちらの方の都合が支給額に大きく影響を及ぼします。しかし、税務ではやはり退職金の支給額には一定の目安があり、過大な退職金と認められれば過大な部分については否認を受けてしまいます。

 上記のいずれについても、一応形式的な目安や条件がないわけではありませんが、最終的には実態に即した判断となり、ある程度主観的な部分もございます。安全策で手堅く対処すればほとんど税務的なリスクは生じませんが、大きな金額になる事が多いので、ついついぎりぎりを狙って一線を越えてしまうということになるのだろうと思います。
大丈夫かな?というのを通り越して、無茶なレベルになってしまっていることもある反面、逆に手堅すぎてもったいないなと思われるケースも意外に少なくありません。

 相談を受けていて非常に残念なのは、ほとんどが事後的な相談で、タイミング的にすでに対応策が限られてしまうようなケースばかりだということです。たとえば、「もう保険金を受け取っていて、決算月も過ぎており、今月中に申告しなければいけないのだけれども、決算作業に入ったら顧問の会計事務所から指摘を受けてびっくりして困っている」とか、「税務調査で指摘を受けて、追徴税額を聞いて腰が抜けた」といったようなお話しですが、こういうような状況ですと、残念ながらもうほとんどお手上げというしかありません。月並みと思われるかもしれませんが、役員退職金は経済環境も含めた会社と経営者の総合的な状況と、ある程度長期的な経緯を勘案して計画的に実行するものであって、そうでなければ強敵相手にノーガードでラッキーパンチを狙うような無謀な行為となってしまいます。
 あらかじめ会計事務所などに相談をしていればそんなことにはならないだろうと思うのですけれども、そのような関係になっていないということは私が思っているよりも多いようです。

 相談相手がいなくて、将来の引退のことや、長期的な経営計画のこと、あるいは決算対策など、あまり専門家に相談せずに決めているという話しを聞くと、我々専門家のサイドにも対応を考える必要があるのだろうと思います。微力ではありますが、相談相手として頼りにしていただける存在になって、事後的にではなく、常日頃大事なご相談に与りたいという思いを新たにしております。

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