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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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経営者の身の引き方 ② 

【経営者の身の引き方 ②】
by 加藤雄一

 私は、丸の内アドバイザーズグループの登記関係を担当しております四谷司法事務所の司法書士加藤雄一と申します。

 前回の続きです。

〈株式の売却とは〉
 株式の売却とは、文字通り、所有している株式を他に売却することです。株式というより「株」と言う方が馴染みがあると思います。
 株式会社であれば、種類株などを発行していない限り、原則、1株について1議決権があるため、株主総会において、大株主は行使できる議決権が多くなるわけですから、影響力が強いことになります。株主総会での決議は単純に考えれば株式を過半数以上所有しているか否かでほぼ決まってしまうということになります。

 株式自体は第三者に売却したりすることができますので、オーナーが株式の大多数を所有しているような中小企業の場合はその株式を売却することにより、事実上、その会社そのものを売却することになるのです。

 買収やM&Aというものの主要な部分は、この株式の売却と言えます。

 株式の売却のメリットとデメリットは以下のことが考えられます。

メリット
•株式の売却手続きだけで、会社に関するすべての売却が行われる。
•所有している会社が現金化できる。
•株式の譲渡の手続きは、事業譲渡や不動産取引の手続きと比較して簡便である。
•会社の所有者(株主)が代わるだけなので、売却の事実が外部からわかりにくく、既存営業などへの影響が軽微である。


 株式の売却の場合は、取引されるのは株式であり、会社という「箱」自体が移転するわけではありません。そのため、会社が有していた、権利・義務や資格、許認可、登録などは原則そのままです。不動産などを多く所有している場合などは、事業譲渡などでは、登記の名義の変更をする際に多額の登録免許税がかかりますが、株式の売却の場合は、名義の変更の必要は無いので、その分のコストが削減できるとも言えます。
また、株式の売却はオーナーとしてみると、所有している株式の売却代金が直接自分の手許に入りますので、リタイアするための手段として考えやすいかと思います。これに対して、事業譲渡では、事業の譲渡を行うのは会社ですので、譲渡代金も会社に入ることとなり、直接的にはオーナーの収入にはなりません。

 株式の譲渡の手続は、株券を発行している会社であれば株券の交付が必要であり、株券を発行しない会社の場合は、株式譲渡の契約を締結することで売却ができます(実務では印鑑の交付とか、役員の変更など細かい作業もありますが、株式譲渡契約の締結と対価の支払が譲渡の重要な部分です)。

 株式の売却があってもそれ自体で会社という組織(箱)自体が変わるわけでは無いので、売却時点での営業には大きな影響は起きにくい、とも考えられます。ただし、会社の所有者と共に、通常は会社の代表者も変わりますので、経営方針や人材配置その他は新しい経営者の考えにより変わっていくことはありますし、取引先や従業員など前の経営者との個人的なつながりが強かった相手については何らかの影響が生じることもあります。

デメリット
•非上場の株式の評価は難しい。
•株式の所有者が多い場合は意見や権利を集約する事が難しい。
•好ましくない契約関係(簿外債務など)も、一括してそのまま引き継がれる。
•買う側は現金の準備が必要。

 株式の売却については、その価値(株式の譲渡金額)をどのように評価するかは簡単ではありません。会社全体の価値が株式の評価額になると考えられますが、その会社の持っている見えない価値などをどのように評価するのか、反対に簿外債務などが無いかの確認等も必要になってきます。

 株式の売却に至る前提の話になってしまいますが、そもそも、株式が細分化している(つまり株の所有者が多数いる)場合などは、売却の価格や方法などで、意見がまとまらず、株式売却まで至らないということもあり得ます。

 また、株式の売却の前に、買い手にとって好ましくない内容の契約などが行われていた場合、その契約は前のオーナーの関係だから、こちらは関係ないという主張はできません。株式の評価や買収監査の論点にもなりますが、既存の契約にどのようなものがあるのかを把握した上で譲渡金額を調整しておく必要があります。銀行の融資などを受けていた場合は、社長個人が連帯保証などをしている場合も多くあると思いますので、そのような契約を引き継がないよう、また、引き継がせないよう手続きを行う事も求められます。

買う側はもちろん現金の準備が必要になります。

<親族への内部承継とは>
 この場合は、株式の譲渡先を親族にしておくことと、今後の為に役員を親族に変更しておくことになります。今まで見てきたものは第三者への会社(事業)の譲渡ですが、これは身内への事業承継であり、右肩上がりの時代には身内へ承継しておけば何とかなったものですが、時代背景から、最近ではなかなかうまく承継が進んでいないのが現状です。

メリット
•親族による経営が継続し、身内同士での引き継ぎによる安心感
•時間をかけて計画的、段階的に承継を行う事ができる
•社内、社外からのコンセンサスを得やすい

 身内への事業の譲渡は、事業の相続でもあり、会社に限らず日本で古くから行われてきた考え方ですので、メリットについてはイメージが湧き易いかと思います。

デメリット
•親族間の意見がまとまらない場合もある(会社以外の財産も含めた相続争いとなるケースなど)
・適任となる後継者がいない(後継者の能力不足や、子供があとを継ぎたがらないケースも含む)
•事業を引継ぎたい考えの者と、お金に代えたい者との認識のズレ
•旧経営者の社内への影響力の行使

 当事者同士が身内であるため、話し合いで物事が決まっていきやすいものですが、影響力が強い旧オーナーなどであると、事業を承継して引退したあとでも経営にいちいち口出しをしてきたり、社内に影響力を残したりしてしまうこともあり、結果、承継が上手くいかないこともあります。
また、親族が複数いる場合、子供が複数いる場合に兄弟姉妹それぞれの考えが異なり、事業を行いたい者と、売却してお金に代えたい者がいることがあったり、事業会社の株式以外の相続財産を含めて、全体の遺産分割の方針(相続税の納税資金の手当も含む)についての協議がなかなかまとまらないこともあります。
さらに、残念ながら、後継者に経営者としての能力が不足していることや、子供がいても事業を承継する意思がない事などもあります。

 ただ、このようなことは時間をかけて後継者を育成し、その間に他の優秀な社員(番頭さんとか)に経営を補佐してもらうなどの対応ができますが、長期的な視点に基づいた事業承継計画が必要になります。目の前の業務に追われてなかなか長期的な経営が出来ない中小企業が多く、計画的に事業承継を進めている会社は現実的にはきわめて少数であると言われております。

(次回に続きます)
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