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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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経営者の身の引き方 ① 

【経営者の身の引き方 ①】
by 加藤雄一

 私は、丸の内アドバイザーズグループの登記関係を担当しております四谷司法事務所の司法書士加藤雄一と申します。

 ここ何年か景気の悪い時期か続いておりますが、しかし、自民党の政権復帰後景気回復の兆しも出ており、会社経営者にとっては、会社の辞め時の判断は難しいと思います。

 「家族経営なので、自分が元気なうちは頑張る」とか、「社員のことを考えると会社を存続させなければいけないので、いずれ後継者に譲る」とか、「事業がうまくいっていないので、会社をたたもう」とか、「そこそこ売り上げも上がっているので、他の方に会社ごと買ってもらおう」とか、いろいろな方針、方法があるかと思います。
しかし、一方では、残念ながら法的な整理をしなければならない場合もあります。いわゆる「倒産」です。
いずれにしても、各種方法、手続がありますので、皆様の状況に応じて最適なものを選択していくことになります。

 では上記について、経営者の身の引き方としてはどういったものが考えられるのでしょうか?

大きく分けて2種類あり、その中で複数のパターンが考えられます。

事業を承継させていくもの(事業承継タイプ
事業を終了するもの(清算廃業タイプ

括弧書きの名前は、決まった言い方は特になく、ここで私が名付けたタイプです。今回はこのタイプのうち、事業承継タイプの説明を致します。

<事業承継タイプ>
事業承継タイプを更に細分化すると下記のものが考えられます。
・事業譲渡
・株式の売却
・親族への内部承継
・MBOによる内部承継
・合併、分割

以下、各細分化したものを説明致します。

<事業譲渡とは>
 事業譲渡とは、法人格はそのままに、その会社で行っている事業だけを譲渡してしまおうというものです。例えば、会社が債務超過の場合を考えてみましょう。会社自体は債務超過ですから、そんなに引継ぎたい者がいるとは思えませんが、一部の優良事業だけとか、ある事業だけを切り離して譲渡するということができます。

 例えば不動産賃貸事業と小売業とを行っている会社で考えると、不動産賃貸事業では銀行からの借り入れも大きくて返済が大変なのだが、小売業は身の丈の範囲での借入しかなく、小売部門だけみると黒字が何年も確保できているという会社があるとします。
その場合は、小売部門のみを事業譲渡し、その売却による現金で借入の多くを返済するということが考えられます。
また、反対に不動産賃貸事業のみを売却して不採算部門を切り離すということも考えられます。

 ここでいう事業とは、「売り上げを上げていくための組織のこと」と考えるとわかり易いと思います。前の例で言えば「不動産だけ」「在庫品だけ」を譲渡することは事業譲渡ではありません。

 スタッフや、仕入先、取引先、なども含めて譲渡することになります。もちろん、その一部だけを対象とすることもできます。

 法律的には「商法」の時代では「営業の譲渡」という言い方をしていましたが、「会社法」に変わってからは「事業の譲渡等」という言い方をします。
 会社法では467条以下に規定があります。ここでは、事業の譲渡についての定義付けというより、事業譲渡する際の必要な手続の規定になっています。

 ただ、それほど難しい決まりではなく、事業の全部の譲渡や、事業の重要な一部の譲渡の場合は、株主総会の特別決議が必要であるという規定になります。(会社法467条及び会社法309条2項11号)


 それでは、事業譲渡の場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット
・当事者間の契約によって、譲渡対象が選べる
・高い値段での売却ができることもある
・譲渡する事業が引き継がれる
・一旦現金が入る
・簿外債務などを引き継ぐ可能性が低い
などが考えられます。

 商取引である以上、相手のあることなので、こちらの思う通りに進むとは限りませんが、不採算事業と、高利益事業がある場合には、高利益事業を高く買い取ってもらい、不採算事業の債務の清算に充てるなどという手法もあります。
 反対に不採算事業を安く引き取ってもらい、会社の体質を改善するということもできます。

 会社の経営者の方には、自分で事業を興してきた自負から、事業に愛着や思い入れがあることが多いと思います。そのような場合は、事業譲渡によって、譲受会社が事業を継続してもらえる可能性もあるわけですから、引継が可能な事業譲渡を選択することもあります。

 事業譲渡は基本的には、事業の売却とも言えるわけですから、一旦、売った方は会社に現金が入ることになります。これで負債等を清算することも可能です。

 事業譲渡は、当事者間の契約により引き継ぐ事業や内容を個別に決定するため、契約上規定されていないものを引き継ぐということはありません。そのため、意図しない簿外債務を引き継がされることは、まずありません。(契約上、隠れた債務なども引き継ぐ場合は別ですが...)

デメリット
 一方、事業譲渡の場合のデメリットは
・個別の資産や契約、取引先ごとに対応・手続きを行うことが必要となる
・原則として免許や許認可は再取得となる
・譲渡益に対して法人税等が、譲渡金額に対して消費税等が課税される。
などが、考えられます。

 たとえば、建物を所有してお店を経営している会社が、そのお店の事業譲渡をする場合、建物を一緒に売却するのか、買い手に賃貸して引き継いでもらうのか、店の従業員の雇用について各人ごとに、継続して雇用するのか否か、仕入先を引き継ぐのか否か、借入を引き継ぐのか否かなど、それぞれ個別に対応して検討することが必要になります。
 また、借入(債務)については、各債権者の承諾がないと承継できませんし、従業員の雇用についても、それぞれの従業員が引き継ぎに同意するかどうか承諾が必要です。仕入れ先や販売先など、すべての取引先についても同様です。そうすると引き継ぎたいものが、うまく引き継げなくなり、そもそも事業譲渡ができなくなってしまうこともあります。

 免許や、許可は、原則引き継げません。もともと免許や許可は、事業を行っていた元の会社に対して与えられたものであり、事業譲渡により引き継ぐ会社が同様の免許や、許可を持っていない以上は再度承継会社で免許や許可の取得が必要になります。
 また、引き継ぐ会社が許可等を持っていても、承継した部分は再取得というケースもあります。

 事業譲渡は事業の売却とも言えますので、売却により譲渡益となれば法人税等が課税されますし、譲渡金額は消費税の課税対象となります。
 登記手続においては不動産の名義を変更する場合に登録免許税が必要となります。

(次回に続きます)
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