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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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資産課税の強化に思うこと 

【資産課税の強化に思うこと】
by 岩松琢也

 丸の内アドバイザーズの岩松です。

 昨年、書評を見て興味を持って、トマ=ピケティ氏の"Capital in the Twenty-First Century"という本を買いました。そのときはまだ日本語に翻訳されていなくて英語版を買ったのですが、結局いくらも読まないうちに日本語版(”21世紀の資本” みすず書房)が出版されてしまいましたので、そちらも買おうかと思っているところです。

 この本では、経済成長や所得格差について統計的に分析したうえで、資産課税の必要性が述べられております。
近年世界的に、富の偏りや経済的な格差の問題、相続税などの資産課税の税制についての問題について、関心が高まっておりましたので、それらの問題について、膨大な統計データの分析に基づいて考察した本書は世界的に話題となりました。

 日本でも、アベノミクスについて格差の面からの議論があったり、なによりも今年(2015年)の1月から相続税の増税が実施されるタイミングでしたので、とりわけ関心が持たれたということがあるだろうと思います。

 さて、その相続税の増税についてですが、国の税収に対してのインパクトという面では、正直なところそんなにおおきな収入増にはつながらないだろうと思います。もともと課税の対象になる人は全体の数パーセントでしかない税目ですので、国の税収という規模からすれば、消費税や所得税のような金額にはなり得ません。これは、どちらかというと、消費税の税率アップ、法人税の税率の軽減に対して、富裕層に対する負担増の税制改正を合わせて行うことによって、バランスをとり批判をかわすという効果と、所得の再分配効果を狙ったものだろうと私は認識しております。

 しかし、国の税収としてはそれほどではなくとも、課税される側へのインパクトは甚大で、高齢化の問題とも絡んで相続税に対する関心は相当高まってきております。おそらく、今回の改正にとどまらず、今後も資産課税の強化は進んでいくでしょうから、当分の間は課税サイドと納税サイドとのいたちごっこが続くだろうと予想されます。

 国としてみれば、資産課税を強化するのであれば、個人資産の保有状況についての把握と、国外への資産逃避の防止が必須となります。平成26年1月から国外財産調書の提出という制度が始まっておりますし、今度の税制改正大綱でも、財産債務調書の提出基準が見直されております。個人が海外に振り込みを行う際にも、金融機関の窓口での手続きは厳格になっているとも聞いております。また、ことしの秋からはいよいよマイナンバーが導入されて、国民全員に番号の通知が始まることになっております。

 これらは、施策としては避けがたい流れであるともいえますが、経済活動がグローバル化している中にあって、一方では税負担を軽減するなど富の流入を図る政策を採っている国もあり、日本から富が流出してしまったり、国内の経済に活気が失われたりしないかという懸念もつきまといます。

 日本は国の債務が1000兆円を超え、財政状態の悪化が懸念されております。今のところは、対外的な債務は少なくほぼ国内で国債が消化されていて、個人の金融資産が債務を上回っている状態ですが、これが逆転してしまうと破綻の危険は現実になりかねません。

 これを企業会計にたとえると、たとえば貸借対照表に年商を上回る借り入れがある一方で、借り入れに対応するだけの預金などの金融資産もあってバランスを保っており、金利と元本の返済は苦しいのだけれども銀行が借り換えに応じてくれているので回っている、という状態といえるかと思います。

 企業価値を評価する際には、資産から債務を差し引いた純資産による評価の尺度と、その企業がどれだけの利益を生み出しているかによる収益力による尺度とがあります。いまの日本は、収益力や成長力に対して負債がかなり大きい状態になっていて、それが金融資産によりきわどくバランスしている状態ですけれども、債務が急には減らない以上、財政を安定させるには、企業でいえば収益力を上げると共に、可能であれば資本を注入して自己資本を充実させるということになります。これを国に当てはめると、収益力を上げるということは、経済を成長させてGDPを増やしたり、経常収支を黒字にするということになります。資本を注入して自己資本を充実させるということは、たとえば海外から日本への投資が増えるようにするということが考えられます。

 財際を安定させて日本のいわば企業価値を上げるためには、国内の課税の強化や資金の流出を抑えるばかりでなく、海外からの投資や人の流入を増やすと共に、国として経済活動の高付加価値化を図る施策を並行して進めていかなければならないものと考えます。
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