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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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社会保険料の負担感 

【社会保険料の負担感】
by 岩松琢也

 4月からの消費税率改訂がいよいよ間近となって参りました。年明けから税率アップに際しての取り扱いや対応の仕方などについてのお問い合わせも増えており、対応に追われている方も多いことと思われます。ちょうど所得税の確定申告の時期でもあり、なにかと税に対する話題が増えて、経営者に限らず、税に対する意識が高くなってきていると感じます。
 
 先日、ご訪問先の従業員の方と話しをしておりましたところ、やはり増税の話題となり、消費税の負担感や、いわゆる富裕層と比較しての公平性についてのご不満などを伺いました。これは、マスコミの報道でも多く見られる論調ですので、多くの方が同様に感じていることと思います。もちろん、私も消費税の増税はダメージを受けますので有り難い話しではないのですが、消費税や所得税についての報道のされ方には少々説明不足を感じてもおります。

 よく「税金が高い」と仰る方のお話しを聞いてみると、意外と給与明細の内訳についてはよくご覧になっていないことが珍しくありません。仮に、給与の額が30万円の方についての源泉徴収額を計算すると、以下のようになります。
 (2014年2月現在の東京の会社で、協会けんぽ加入を前提とします。)
総支給      300,000円
厚生年金      25,680円
健康保険      14,955円
介護保険      2,325円
雇用保険      1,500円
社保合計      44,460円
社会保険料控除後 255,540円
所得税       6,750円
手取り      248,790円
※上記では住民税は入れておりませんが、だいたい所得税の倍くらいとなります。上記の例で住民税を所得税の倍の金額として計算すると、手取額は235,920円となります。

 上記の例でいいますと、給与の総支給額30万円に対して、住民税も含めるとだいたい6万4千円が源泉徴収されて手取りは23万6千円くらいとなるわけですが、実はこのうち所得税は6,750円に過ぎません。年末調整から確定申告の時期にかけて、よく医療費控除などで税金を取り戻そう、といった話題が上りますが、そうした還付の対象となるのは所得税ですので、上記でいえば、全体の源泉徴収額6万4千円のうち、還付申告の対象となるのは6,750円に過ぎません。

 また、上記の例でさらに家計に対する消費税の支出がどのくらいになっているかについて考えますと、まず、ローンの返済や家賃の支払いなどの住宅に関する支出は消費税の対象にはなりませんので、それと貯金を除いた分が消費税の対象になる支出と考えられます。上記の例で、手取額235,920円のうち、住宅支出や貯金の分を除いて100,000円を支出したとしますと、それに対する消費税は従来で5,000円、4月以降で8,000円ということになります。

 こうしてみると、多くの会社勤めの方にとって、最も負担となっているのは所得税や消費税ではなく、圧倒的に社会保険なのだということがわかります。しかも社会保険は労使折半、つまり従業員の負担しているのは総額の半分ですので、同じ金額を会社でも負担しております。つまり上記の会社でいえば、給与30万円の人を雇用するのに、会社は344,460円プラスアルファを負担することとなり、会社は当然この社会保険負担を含めた総額を考慮に入れて給与の額を決定します。上記の例について言い換えますと、会社としては社会保険料も含めると344,460円を支払ってその人を雇用しているのですけれども、その344,460円のうち本人の手取りとなっているのは、235,920円だということになります。
このうち、会社負担と本人負担を合わせると、社会保険の料率は給与の金額の約30%で、所得税と住民税と消費税を合わせた分よりもさらに大きい割合を占めます。

 こうしたことは、従業員の立場だとそれほど実感を持っていない方が多いようですが、経営者の方は皆さん非常に頭を悩ませております(社会保険に加入していない会社は問題外ですが)。従業員の新規雇用に当っては、当然社会保険料の負担も含めて採用数や給与の額を検討しなければいけませんし、また、社会保険料の会社負担を軽視してそれらを決めてしまったために、後になって資金繰りに苦しんでしまうというケースもまま見受けられます。

 いま、政府では消費税増税後の消費の伸び悩み、経済成長の躓きを懸念して、賃金のアップを経済界に呼びかけておりますが、一方で、今年は介護保険料率もアップする見込みで、社会保険料の負担は一層重くなります。
 人件費は一般的に他の経費よりも減らしづらく、また、給与水準が変わらなくても社会保険料の負担で人件費は上がっていくという傾向が続くとなると、制度的には経営者は雇用や給与水準のアップに常に逆風を感じている状態となっています。

社会保障支出をふやして、福祉の充実を訴えるのは耳障りはいいですが、こうした実情を踏まえて、社会保険料の負担軽減の方策も考えないと、長期的な見通しの中で新規の雇用や給与のアップを経営者が決断することは容易ではないことと懸念します。
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