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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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ある農園の破綻 

【ある農園の破綻】
by 岩松琢也

 最近、ある会社の特別生産開始決定の記事を目にしました。(仮に「A社」とします)
A社はそのオーナーの行っている農業とその関連事業の核となる会社でした。
先方はご記憶ないだろうと思いますが、私は以前そのオーナーにある案件に関連してお目にかかっており、ずっと気になっていた会社でした。

 その案件というのは、数年前、ある農場(仮に「甲農園」とします)が実質破綻の状態に陥っており、再生の相談を受けたものでした。甲農園は過大な資金を投じて開発が行われた後、不採算の状態が長く続いたため、過大な債務を負っていて、その後の経営努力で採算は上向いたもののとうてい借金の全額返済は見込めない状況でした。

 甲農園は単独での再生は見通しが立たず、債権者である金融機関もこれ以上猶予は与えられないということで、一定期間のうちに外部のスポンサーを見つけて再生計画を提示できなければ破産、競売は避けられないという状況でした。

 今は、日本のTPP参加といった環境もあり、農業への民間企業の参入や、法人化して大規模経営を行ったり海外進出を果たした農家の話題など、ビジネスのにおいても農業への関心が高まり農業関連のニュースが増えてきておりますが、当時はまだそれほどではなく、スポンサー探しは容易ではありませんでしたが、なんとかぎりぎりのタイミングである会社が支援に手を挙げてくれました(仮に「B社」とします)。

 B社のオーナーは複数の地域で手広く農園を経営し、若者の就農支援などの活動も行っており、経営についても大変勉強していて、農家は経営に疎いという私の先入観を覆すような方でした。
B社は考えられる限り精一杯の支援と手堅い計画に基づいた現実的な再生計画を策定し、私もこれで甲農園は立ち直れるという手応えを感じておりました。

 B社をスポンサーとした再生案を債権者の金融機関に提示したところ、ほとんどの金融機関から了解を得られ、安堵しかけたところ、突然風向きが変わりました。甲農園の債権者には地元の農協が含まれていたのですが、その農協の担当者が急に強硬な反対意見を主張し始めたのです。その担当者は、以前から甲農園の経営者(仮に「Cさん」とします)と確執があったらしく、「再生計画で「甲農園」が残り、Cさんが助かるのは納得できない。破産して競売にかける以外の選択肢は考えられない」と強行に主張します。しかし、そもそもスポンサーを探して再生を図ることは事前に了解を得ていることです。「どうせスポンサーなんて見つからないと思ったから反対しなかった」というのですが、それでは理由になりません。結局合理的な理由に基づく反対ではないし、他の金融機関は了解してくれていたので、債権額の割合でも頭数でも問題なく決議は通るだろうと思っていたところ、なんと、他の金融機関も、「地元の農協がああいうのでは、やむを得ない」と一斉に右へならえと態度を翻してしまいました。その後は、紆余曲折あって相当説得も繰り返したものの、結局こちらの提案は受け入れられず、甲農園は破産となり競売にかけられました。

 その甲農園を競売で買い取ったのが冒頭のA社だったのですが、上記の地元農協の担当者は、以前からこのA社に、甲農園が破産になったら競売で札を入れて欲しい、と頼み込んでおり、結局、競売では他に札を入れるところも現れず、すんなりとA社に決定してしまいました。うわさでは、A社の競売の資金はこの担当者が融資をつけたとも聞きました。
買収後のA社の甲農園の運営方針について、おおよそ耳に入ってきましたが、かなり荒っぽい内容で、正直なところB社の提案にはかなり見劣りが感じられました。A社のオーナーには、一連の活動の中で面談してもらったこともありましたが、A社自体はまじめに農業に取り組んでいて、決して悪い印象は持っていません。むしろ、農業そのものについては情熱を持って取り組んでいた方だと思っています。しかし、甲農園の事業の見通しについては、将来同じ事の繰り返しとならないかと懸念を感じました。

 一方で、B社はせっかく手を挙げてくれたのに、袖にされてしまったわけですが、幸いこの一連のやりとりの中でこの地域にパイプができて、ほどなくその近くに新たに農園(仮に「乙農園」とします)を開くことができました。

 上記のような経緯で、この地域には同じ作物を生産するA社の甲農園とB社の乙農園が併存することになりました。私はその後も両社の様子が気になっていたのですが、甲農園はどうも経営状況が思わしくないようであまりいい話が聞こえてきません。それに対して、乙農園の方は、新規に開いた農園ですので苦労はしてるものの、着実に軌道に乗ってきているようでした。

 結局冒頭のとおり、A社の甲農園は再び最悪の結果を迎えてしまうこととなりました。一方で乙農園の方は立派に黒字化して、順調に事業を伸ばしており、まさに明暗くっきりとなっております。

 私はこの案件で、農業の分野でも力のある若手経営者がいること、一方で、農協のような合理的でない考えの人も多いこと、そして、経営熱心なところとそうでないところの落差が他の業種に比べて著しく大きいことなど、大変勉強になりました。
 乙農園には、今後もしっかり事業を拡大して、農業の経営ノウハウを広めていって頂きたいと思う一方で、当時債権者だった金融機関の方達には、(おそらく何の痛みも感じていないと思いますが)本件について改めて振り返り猛省を求めると共に、金融機関としての責任の在り方について考え直してもらいたいと願います。
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