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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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個人保証と資金調達 

【個人保証と資金調達】
by 岩松琢也

 公認会計士・税理士の岩松琢也です。

 今月早々(平成25年5月2日)に、中小企業庁と金融庁の共同で設置された「中小企業における個人保証等の在り方研究会」から、「中小企業における個人保証等の在り方研究会報告書」が公表されました。
http://www.fsa.go.jp/singi/chushoukigyou/index.html

 中小企業では、金融機関から借り入れを行う際に、8割超の経営者は個人保証を提供しているといわれております。個人保証によって、中小企業が金融機関の融資を受けることが可能になっているという面もありながら、一方では、個人保証は、保証を行う経営者等に対して過大な経済的、精神的負担、負わせることにつながり、企業や事業の拡大、事業の後継者への承継、あるいはM&Aによる第三者への事業の譲渡などの阻害要因となって、経済の活性化に悪影響を及ぼしている面もあります。

 本来は、株式会社という組織は、制度上「所有と経営が分離」しており、出資者は出資額を上限として責任を負う「有限責任」のみを負っていて、経営者は出資者に対して経営責任を負う、という仕組みであり、これは、資金を調達して起業や事業の拡大を行うことを容易にする、という目的によるものです。

 しかし、現実には、日本の中小企業では多くの経営者は個人保証によって金融機関の融資を受けており、本来株式会社は有限責任の組織形態であるのが事実上無限責任になってしまい、本来の制度上の趣旨が損なわれております。

 こうした中、現在検討が進められている民法の改正においては、経営者が全財産を失って再起不能に陥る問題や、親戚や知人など経営に関与しない人まで保証を負わされて債務の肩代わりを迫られるという問題が後を絶たないことを背景として、個人保証に制限を行うという案も議論されております。

 しかし、個人保証が、起業や事業承継、M&Aなど経済の活性化の阻害要因になっているという批判の一方で、個人保証を制限しすぎると、金融機関が中小企業に対して融資を行いにくくなってしまうのではないか、という懸念もあります。
 融資を行う金融機関としては、中小企業に対して担保資産の裏付けのない融資を行うには大きく次のような懸念があります。

 ①中小企業の決算書は粉飾など信頼性が低く、融資の判断に必要な十分な情報が得られない。
 ②中小企業の多くは、会社と経営者の家計の区分があいまいになっていることが多い。

 上記の2点は、いずれも融資を行う側からするともっともであり、個人保証の問題を解決するには上記の問題をクリアすることが必要です。そして、両者のうち特に決算書の信頼性は、それが十分信頼に足るものであれば、経営者が会社と家計を区分しているかを判断する情報源ともなり、そういう場合であれば融資を断ったり、あるいは個人保証をつけることについても合理的な根拠が得られますので、より優先的に取り組まれるべき問題であるといえます。

 中小企業では、上場企業と比較して、会計監査のような法的な裏付けがありません。そこで最近では、決算書が適正に作成されているかチェックリストの提出を求め、それによって決算書の信頼性を確保し、金利等の融資条件を優遇するといった取り扱いをする金融機関も出てきました。このチェックリストでは、所定の項目ごとに会計基準に従って会計処理が行われているかをチェックするようになっているのですが、その会計基準につきましても、最近整備が進められております。

 日本の会計基準はこれまで上場企業を中心に整備されてきており、特に最近では国際会計基準との整合性についての議論が進んでおります。しかし、こうした上場企業に適用される会計基準は、一方で中小企業については税務会計との乖離があったり、事務負担などの面で実務になじまないことが多く、中小企業の会計業務において会計基準への準拠性を厳格に問いにくい一因にもなっておりました。そこで、中小企業の実態に見合った会計基準を制度化する事が、結果的に中小企業の決算書の信頼性を高めることにつながる、という認識の基に、中小企業庁と金融庁が共同して設けた「中小企業の会計に関する検討会」から、平成24年2月に「中小企業の会計に関する基本要領」(略称「中小会計要領」)が公表されました。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/youryou/

 これまでは、大企業で準拠されている会計基準は中小企業の実態にそぐわない、という免罪符のもとに、適正とはいいがたい会計処理も見逃されてきた面がありますが、今後中小会計要領への準拠性が問われるに従って、そうした言い分けが通用しなくなって行くと考えられます。

 個人差はあるでしょうけれど、これまで税理士業界は、自戒も含めまして、中小企業の会計の信頼性に十分な指導的役割を果たしてきたとは言い難いのが現実です。しかし今後は、決算書の信頼性の向上が、中小企業への融資にプラスに働き、個人保証による弊害を減らして経済の活性化につながるよう我々としても貢献していくべきと考えます。

 上記のように、制度的には、会計基準を整備すると共に、個人保証を制限することで、中小企業に対する融資の基盤を整えて経済活動を活性化しようという方向性が出てきております。あとは、金融機関の側で、信頼できる決算書で回収可能性の判断ができれば積極的に融資を検討するという姿勢が見えれば、経営者の意識も変わっていくものと思われます。
 決算書がいいかげんであったり、会社と家計のケジメがなければ、個人保証を求められても仕方がありませんし、返済できる計算が立たずに借金を重ねれば悲劇的な結末を招きます。まだ現状としては、中小会計要領は十分に認知されているとはいえませんが、前向きに努力している経営者の方には、上記をご理解頂き、適正な決算書で金融機関にアピールして融資を受ける事を心がけていただきたいと思いますし、私たちもそのための協力をしていきたいと考えております。
 
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