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士業(サムライ)日記  専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ

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会社は誰のものか(会社の意思決定) その1 

【会社は誰のものか(会社の意思決定) その1】
by 加藤雄一

 皆様、こんにちは。
私は、丸の内アドバイザーズグループの登記関係を担当しております。四谷司法事務所の司法書士加藤雄一と申します。

 今回は会社法に基づいて会社は誰のものかということを記載していきたいと思います。

 概念上で会社は社会のものであるとか社員のものという考え方もあるかと思いますが、会社法上では基本的には会社というものは株主のものというのが前提となっています。

 ただし実際会社を運営している中では会社は誰のものかということを気にする場面や確認する場面というのはそうそう多くはありません。

 しかし会社がピンチになった時、例えば会社の運営がうまくいかない時とか、当事者間で問題が発生しているような状態のときには会社が誰のものであるかというのが大きな影響を与えることもあります。

 例えば、今まで仲の良いAとBの2人が代表取締役として会社を運営してきた場合で考えてみます。(前提として、他の取締役はおらず、取締役会も設置されていません)
 会社を設立する時に、Aが80%、Bが20%の割合で出資し、その後、その割合に変動が無かったものとします。
今までは2人の立場は社内的には同じでした。ところが意見が対立した場合、どちらが物事を決めていくことができるのでしょうか?

 もちろん、お互いが話し合いをして納得して物事を決めていく事ができればそれに越した事はありません。
社内で賛同者を多く集めたとしても、それが法律的に認められるわけではありません。
よく、「過半数を抑える」という言葉を聞く事があると思いますが、これは人数のことではなく、原則、出資の割合の多寡によって決定されます。
つまり、会社法の中でどちらが権利を持っているか優先権を持っているかと考えると、多く出資した方ということになり、かつ、それが過半数を超えている場合は事実上、その会社の支配権を有していると言えます。

<取締役を追加して自分の味方の取締役を増やしたい!>
 AやBは今後会社を運営していくうえで、仲間が多い方が有利と考え、それぞれ自分の味方になる役員を増やそうと考えました。

 ここで、会社法をみてみると、「役員は、株主総会の決議によって選任する」(会社法329条1項)とあります。

 ここでいう「役員」とは「取締役等」のことです。
つまり、役員を選任するためには株主総会の決議が必要であるということです。

 例え、現在の取締役の意見が強い会社であっても、株主総会以外で役員を選ぶことはできません。AやBが自分の仲間を取締役にしようとしても、株主総会を開催しない以上、勝手に役員にしてしまうということはできません。

 では、株主総会を開催したとしても、自分の思う通りに取締役選任の議案が通るのでしょうか?

 会社法では、「株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行う。」(会社法309条1項)とあります。

 つまり、過半数の株主が出席し、その過半数で決するということになります。
なお、会社の定款の規定により、この要件(定足数)を緩和することもできますが、取締役の選任決議は、定足数について定款の定めをもってしても議決権の3分の1未満に下げることはできません。また、決議要件については定款で過半数を上回る割合を定めることはできますが、下回る割合を定めることはできません。(会社法341条)

ということは、Bについては、そもそも株式の20%しか有しない訳ですから、勝てる見込みはないということになります...。

 今までAと仲良く会社を運営してきたのに、この仕打ちです。Bは納得できないと思いますが、会社法の面から言えばこのような取り扱いになります。
 するとBとしては、議決権の数で負けている訳ですから、Aが取締役を追加するのを、指を咥えて見ていなければならないのでしょうか?
 反対にAとしては、株式の大半を所有しているのですから好き勝手な振る舞いをしてもよいのでしょうか?

<大半の株を所有しているから株主総会を開かなくても良い?>

 会社法では、「株主総会は、会社法に規定する事項や、組織運営管理など株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」(会社法295条1項)として、株主総会は万能の機関として定められています。
そして、会社法で株主総会決議が必要であると規定しているものについて、会社の定款の記載で他の者(取締役、執行役、取締役会、第三者委員会などの株主総会以外の機関)が決定することができると定めたとしても、その定款の定め自体が無効となります。(会社法295条3項)

 つまり、先に記載した、役員は株主総会の決議によって選任する(会社法329条1項)とあるものを、定款で、代表取締役が選任するとか、指名するとかに変更することはできません。したがって、株主総会を開催して決議することが必須になります。

 実際の会社、特にほぼ個人所有の会社や、親族だけで経営している会社などは「株主総会なんて開催したことが無い!」ということがあるかもしれませんが、法律的には許されていません。ただ、以下のような規定もあります。

「取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。」(会社法319条1項)

 つまり、株主全員が賛同していれば良いということになります。賛同していれば書面を出したり、メールなどで同意の意思表示はしてもらえると思います。
 この場合は、実際に株主総会が開催されたわけではないものの、決議があったものとみなすことになります。株主総会決議の省略と言われるものです。

 これらのことから、株主間で意見が対立していることが明らかな場合などは、同意を得られない訳ですから、この総会決議の省略をすることは事実上できません。
 上記Aとしては、株主総会の決議の省略をできなので、正式な手続で株主総会を開催しなければなりません。

 では、株主総会の開催はどのような手続が必要になるのでしょうか。

Aが株主総会を開催する場合を考えてみます。会社の機関設計の仕方によって内容が変わってきますので、ここでは、いままでの前提通り、取締役会を設置していない会社で、取締役2名(ABともに代表権あり)、株主AB(A80%、B20%)とします。

<株主総会の開催方法>

 まずは、株主総会の招集の決定をします。具体的には開催場所や時間などを決めることになります。(会社法298条1項)

 そして株主総会の開催日より1週間前に、株主総会の招集通知を全株主に発送します。(会社法299条1項)
これは、本件の場合なので、他の条件が該当する場合には、2週間の期間を空けたり、反対にもっと期間を短くすることもできる場合もあります。

 また、全株主の同意があれば、招集通知の省略も可能となることもあります(会社法300条)が、前に記載した株主総会決議の省略とは異なりますので、ご注意ください。

 総会当日の流れは大体下記のとおりです。
受付→議長選任→定足数報告→開会→決議事項説明→質疑応答→採決→閉会

 定款に株主総会においては誰が議長となるのかの規定が記載されているのが通常ですので、その規定に従い議長が議事進行を行います。
そのため、議長には総会の秩序を維持して議事を整理する権限があります。(会社法315条)

 採決の方法は、挙手や拍手でも構いませんが、採決でなければいけないので、議長が勝手に決めてしまうということはもちろんできません。
 ただ、議長が意図的な議事進行をすることも事実上できてしまいますので、誰が議長になるかということは注意しなければなりません。

 例えば、議長が「反対及び棄権の方は挙手をおねがいします」という形でやんわりと反対票が入れにくい雰囲気を作ることもあるからです。

 そして、本件の会社においてはAが80%の議決権を有している訳ですから、Aが出席し、議決権を行使(賛成または反対)することにより議事が決定していくことになります。
ということは、Aとしては、適法に株主総会を開催し、つつがなく総会を執り行えば、自分の思うような決議が出来ることになります。

 しかし、Aとしては、そんなまどろっこしい手続をしなくても、結果が見えている訳なので、こういう手続を省略してしまっても問題ないと考えるかもしれません。
例えば、総会自体を開いたことにして、議事録だけを残しておくということです。

 このようにAが株主総会の手続を省略してしまったり、一部行わなかったりした場合はどうなってしまうのでしょうか?株主総会は無効となってしまうのでしょうか?

(以下 次回に続きます。)
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